ワンダフルストーリーvol.4「最後の手紙」

#ワンダフルストーリー

家事代行事例④

最後の手紙

K様*はプレミアサービスと呼ばれる一人で行う家事代行で伺った初めてのお客様でした。その頃は作業が終わってドアを閉めると、何かやり残したことはないかと気になりました。クレームをいただいたわけでもないのに、及第点をつけられないように自分で感じていたのです。ですから、K様から最終日にいただいたお手紙を、「皆さんに見せてもいいかしら?」とミニメイドのマネージャーから聞かれたときにも、「いえ、とんでもない」と即座にお断りしていました。
最近やっと、K様からいただいたあのお手紙を、皆さんにもお見せしていいのではないかと思えるようになりました。

毎回白紙のままで、K様から何かを書かれることはなかったのです。それでも、私からは気づいたことなどを書いていました。

私が最初のプレミアの一人作業として伺うことになったのがK様でした。単身赴任で東京のマンションに一人暮らしをされ、2週間に1度伺って、水回りからリビングやベッドルームの掃除や拭き掃除などをしていました。作業が終わると、その日の作業内容をチェック表に記入しますが、メッセージ欄には「本日はご利用いただきましてありがとうございました」と書くのが精一杯でした。そのうち少しずつ余裕が出てきて、近況などを書くようになったのです。

たまたま向かいの公園でラジオ局の生放送番組の収録が行われたときなど、「窓を開けるとゲストで来ていた布施明さんの生の歌が聞こえてきて、作業をしながらいい思いをさせていただきました!」と書きました。

バレンタインデーの後の週のこと。チョコレートと一緒に贈られたのでしょう。奥さまとお嬢さま4人の写真とコメントの書かれた色紙がお部屋に飾られていました。K様は4人のお嬢さまのお父さまだったのです。その日のメッセージには「美女5人に囲まれてお幸せですね!」と書きました。

カゼが流行っているときには、「お気をつけください」と書き、「次回のご要望は何かございませんか?」とお聞きしましたが、毎回、白紙のままで、K様から何かを書かれることはなかったのです。それでも、私からは気づいたことなどを書いていました。

最終日、作業が終わってチェック表に記入しようとすると、1枚の手紙が置かれているのに気づきました。

K様のお宅での家事サービスが1年8カ月を過ぎる頃です。K様は単身赴任期間を終えられ、ご自宅に戻られることになり、今月いっぱいで家事サービスは終了との連絡をマネージャーから受けたのです。

最終日、作業が終わってチェック表に記入しようとすると、1枚の手紙が置かれているのに気づきました。そこには次のように書かれていたのです・・・。

「長い間お世話になりました。
いつもきれいにしていただき、感謝しています。
また、達筆な文字で優しいメッセージをいつも残してもらい、癒されておりました。家族と離れて暮らすことは、考えていた以上に随分と寂しいもので、二週間に一回とはいえ、メッセージが楽しみで帰路に着いたものです。

単身赴任も終え、これからは家族と一緒に暮らすことになります。
本当にお世話になりました。これからもお仕事頑張ってください。

お元気で・・・まだ顔見ぬ“素敵な方へ”

それでは・・・!!」

一度もお会いすることのなかったK様は、これまでずっと、最初からずっと、私を励まし続けてくださったのです。

K様とは一度もお顔を合わすことはありませんでした。奥さまとお嬢さま方は、飾ってあったお写真で拝見していましたが、それはご家族から送られたもので、そこにK様は写っていませんでした。最後までK様がどんな方なのか知ることはなかったのです。

お客様とミニメイドのスタッフやリーダーに支えられて、この5年間がありました。3年目くらいで、自分の仕事に満足のいく点数を付けられるようになり、5年目でやっと、K様のお手紙をお見せできるような、そんな気持ちになれました。

そして、一度もお会いすることのなかったK様は、これまでずっと、最初からずっと、私を励まし続けてくださったのです。その手紙は今でもファイルに入れて私の家に飾ってあります。いつも元気と笑顔をいただける私の宝物として・・・。

プレミアサービス 平山 二巳子

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