ワンダフルストーリーvol.10「お名前をお呼びする事」

#ワンダフルストーリー

家事代行事例⑩

お名前をお呼びする事

数年前のことです。携帯メールのメッセージにピンときて、すぐに実践したことがありました。それは、私が家事代行の仕事をしているミニメイドサービスの社長から配信されたメッセージの一文でした。

—相手の方のお名前を覚えると、良いことがありますよ—

私が家事代行で伺っている吉本様は、大きなテナントビルを経営されています。1階に管理事務所があり、その奥がご自宅です。ご自宅に伺う際には、管理事務所の方たちと顔を合わせるので、毎回、ごあいさつを交わした方のお名前はすぐにメモして覚えるようにしました。次におあ会いしたときには「○○さん、こんにちは」とお名前を呼んでお声をかけると、「覚えていてくれたのですね!」と喜ばれるのです。

電球が切れたり、ネジがゆるんだ時、吉本様からの用事をお願いするときにも、「あのぉ〜」と頼むよりも、「○○さん、これお願いできますか」とお名前を呼んだほうが、ふれあいを感じますし、快く受けていただけます。それに、こちらがお名前を呼ぶと、相手の方も私の名前を覚えてくださるのです。

「クリーニング屋さんにお出しするものはありませんか?」とお聞きすると、
「荒巻さんが洗ってくれた方がきれいだから」とおっしゃるのです。

吉本様のお宅に伺うようになって今年で9年目。週に2回、毎回4時間伺っています。吉本様とお姉様のご自宅、それにゲストルームを含めると、お風呂もトイレも3ヵ所の大きなお宅です。クローゼットも7カ所あり、そのうちの5カ所は季節の物を入れ替えます。第1クローゼットにこれからお召しになる春物を入れ、第5クローゼットには冬物をしまいます。この時に入れる防虫剤だけでも大変な数になります。

洋服の入れ替え時期に、
「これ落ちないかしら?」
とシミがついたセーターを渡されたことがありました。手洗いしたところ、きれいになって大変喜ばれ、それ以来、
「クリーニング屋さんにお出しするものはありませんか?」
とお聞きすると、
「荒巻さんが洗ってくれた方がきれいだから」
とおっしゃるのです。私も嬉しくなって、家庭用のクリーニング剤でせっせと洗いました。ホームクリーニングですと、石油系の匂いもつきませんし、部分洗いもできてきれいに仕上がるようです。それでも、スパンコールなどがたくさん付いたセーターを渡された時には、
「これはちょっと…」
と、クリーニングをおすすめすると、
「たいじょうぶ、大丈夫」
と明るくおっしゃいます。慎重に押し洗いをして、軽く脱水し、ポンポンと元のサイズに伸ばして干すと、ふんわりきれいに仕上がりました。

最初の頃は基本的なお掃除で終わっていましたが、次第に
「これもいいかしら」と頼まれるようになりました。

お洋服だけでなく、食品も冷蔵庫を見て、足りないものや賞味期限が切れるものに気をつけています。銘柄が分かっていますので、足りなくなれば牛乳やヨーグルトも補充します。賞味期限が切れそうなものは手前に移動させて、メモでお知らせします。

海外に出られることが多い吉本様ですが、持って行かれるものを1カ所に広げて、
「これ全部詰めるの、任せてもいい?」
スーツケースのパッキンも私の担当になりました。
“すぐに取り出すものはここに、下着はポンと飛び出さないように、上に書類を置いて…”と順番に詰めていきます。お帰りになってからも、ケースを開けて洗濯ものを出し、その他は元の場所に戻します。

最初の頃は基本的なお掃除で終わっていましたが、次第に「これもいいかしら」と頼まれるようになりました。私の方も余裕が出てきて、受け皿が大きくなったようです。

お名前をお呼びすることで、コミュニケーションを良くします

お名前をお呼びすることで、信頼も強まっていったのだと思います。私たち家事サービスのスタッフがいつも携帯しているミニメイドの「パーソナルサービスの10カ条」にも次のような一文があります。

—お名前をお呼びすることで、コミュニケーションを良くします—

お客様のお宅では「奥さま」ではなく、お名前をお呼びしましょうということですが、これはどのような場面でも通じると思います。お客様だけでなく、お客様が関わるすべての方に、同時に私も携わっているからです。お名前をお呼びしてお客様や関わる方たちとのコミュニケーションを良くすると、いい仕事ができますし、仕事が楽しくなります。

お名前をお呼びするという小さなことから、大きな信頼が生まれるのですね。

プレミアサービス 荒巻 泰子

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